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10  レオノールのこと



彼女はどんな先生か。 とにかく情熱的なのだ。おしえることに真剣。プロバンス、コートダジュールを愛する気持ちにみちみちている。 「開発されてしまったが、古い伝統を大切にしなければならない」とか、大事な言語を絶やさないようにしなければならない、とか。これらの運動にたいして、彼女や、画家であるという夫は、支援をしている、うんぬんである。

プロバンス語を保存するために、ラップのリズムに乗った今風の歌がある、とテープレコーダで聞かせてもくれた。聞いた事のない、ラテン系の言葉であった。 ポルトガル語を勉強した彼女は、「この言葉とポルトガル語の間には、多くの文法的共通点がある」と教えてくれた。 同時に、L'OCCITANISMEとかD'OCとかD'OILとか、聞いたこともない語について、資料をそえて説明してくれた。彼女を形容するにふさわしい言葉は、l'enthousiasmeであろう。

そして、伝統的なたたずまいがよく保存されている集落としてEntrevauxを紹介してくれた。 ニースからプロバンス鉄道で1時間半の山奥である。彼女のすすめに従い、週末はそこへ出かけるわけである。

その週(第2週)の金曜日のコーヒーブレークに私はナタリーにいった。 「あなたが、なぜレオノールがとても良い先生ですよ、といったのか、わかりました。先生を変えてくれた事に関して感謝しています。」と伝えた。

彼女いわく。「そうでしょう。レオノールはとても良い先生です。でも、先生を替えたのは私の発案ではなくて、校長が<なるべくいろんな先生に教わったほうが良いだろう>と配慮したんですよ。」と。 「わたしはあなたと話しをしていてとてもおもしろかったし、楽しかったですよ。」とも。なんといううれしい言葉。ということは、先日の「残念だ」の主語はnousだったということか。