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8 ナタリーからレオノールへ  



第1週があまりにもすばらしかったので、私は研修修了後に1週間予定していたプロバンス旅行をキャンセルし、研修を延長する事にした。プロバンスはまたいける。1人でいってもわびしい。でも、この仲間と時間を共有できるのは今をおいて2度とないのだ!

第2週目の火曜日の2時限の終わりに、ナタリーが私にいった。 「4時からの個人レッスンですが、あなたにはとても残念だけど、今週から先生が変わります。新しい先生はとても良い先生ですよ。」と突然の宣告。(「残念」の主語がnousではなく、tu だったのがとても気がかりになった) 彼女は、わたしの表情から落胆の度合を読み取ったはずだ。 彼女が部屋を出るなり、ライナーが大声で笑った。「シンはナタリーとの個人レッスンを期待して1週間延長したのに! こりゃ残念だね。」

4時5分に新しい先生のレオノールがやってきた。教室を間違えて、別室で待っていたそうだ。幸先がわるい。 しかし、なんとナタリーとは対照的な事か。身のこなしも、話し方もぜんぜん違う。私の理解度合には無関係に鉄砲の玉のようにバラバラしゃべってくる。わたしに「迫ってくる」という感じなのだ。どちらかといえば、なりふりはかまわぬ学者タイプなのだ。

「何の因果でこんな制裁を受けねばならないのか。」 わたしは彼女の話が上の空になりそうになるのを必死でこらえていた。

ところが、まもなくこのような表面的な印象で判断する事がとても危険なことを知る事になるわけであった。