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58 本物のプロヴァンスの少女  
 ツーロン発サントロペ行きのバスを Le Lavandou で降ります。 バス停からは街中を下って海岸に出ることになります。 
 地図をもらいに行った i のカウンターに Santo Coupoと書かれたパンフを発見。 これって、プロヴァンスを賛える重要なキーワード。 
 何々? 今晩と明日は隣のボルムの町でぶどうの収穫祭があるみたい。 とくに、今晩はホールで伝統楽器のコンサートがあるように読める。 
 パンフをしまって、海岸をさらに進むとプチホテルが。 海の見えるテラスつきのかわいい部屋が300FFで、即決。 白くて簡素なインテリア。観音開きの扉の向こうには地中海。(足りないのは同伴者だけ!) 
 海辺を気持ち良く散歩して、夕食を終えてからタクシーでボルムへ、と思っていたら、軽い夕食のワインで酔っ払ってそのままお寝んね。(まだ強度の時差ぼけモードでした。) 
 
 翌朝は、ボームの中でも、ボルムレミモザという村へ行って、それからサントロペ、そこで乗り換えてサンラファエル、さらに列車でエクスという長い旅程。日曜日で減便されているので、薄暗いうちにチェックアウトします。 
 カフェで朝食。8時のツーロン行きバスに乗るのはちょうど太陽が昇るころ。5分ほど先のボルムルパンのバス停で降ります。 
 ここで「ボームレミモザの村へはこの道を上がればいいのですか?」とまったくローカルスタイルのお年寄りにたずねます。 丁寧に教えてくれるのですが、フランス語がたどたどしい。もしかして、と英語にしたら、イギリス英語で返事が来ました。ピーター・メイルの仲間かな? 
 15分ほど登ったボルムレミモザは、レストランやアトリエが多くてちょっと観光化しているきらいはあ りますが、高台の斜面に位置する、穏やかな、そしてすてきな村です。ぶどう畑の向こうに地中海が見おろせるところがやっぱりいいなあ。 
  さて、10時のサントロペ行きに乗るのだから、のんびりしてはおられない。下って、バス停の広場へ戻ると、お祭りの準備が始まっている。このバス停交差点がお祭りの場所なんだ! 
 じゃ、バスが来たらどうなるんだ? バスは入ってくるのか? 祭りの案内に聞くと「分からない。警官に聞いてみたら?」 警官に聞いて、「おら、ここの者でないから知らない。」 さすが南仏、みんなテキトーにやっている。 でも、どうやら、村をバイパスしている国道に出ればバス停はありそうだ、という事は分かった。 
 レストランの屋外のテーブルでお茶して休んでいるうちに祭りは始まりそう。 こりゃ、10時に帰るのはもったいない、と1時のツーロン行きに乗って昨日の道を引き返すように予定を変更しよう。 
 両側にならぶ露店ではワインや民芸品、はたまた骨董的なオリーブの油をしぼる機械の実演まで始まります。そのうち、プロヴァンス衣装の踊り手と楽隊が登場!! やった、という感じです。 
 フリオ・イグレシアス風の司会のお兄さんが登場してきて、開会を宣言。来賓の簡単なあいさつも。もちろん、皆さん、プロヴァンス訛りです。 
 プロヴァンス衣装の少年少女がスタンバイしているところへ近づいていっしょに記念撮影します。もちろん、お目当ては少女のほう。 
 一団は、まず、通りを往復パレード。ついで、広場で何曲も集団ダンスを披露します。 そのうち、鎌と麦の束をもったミレイユ(と私がなずけた少女)が登場して、ソロで収 穫のダンスを。私は、ビデオを回し続けました。 そう、少女たちの中では、このミレイユがとりわけ際立っておりました! まさに、「プロヴァンスの少女」です。 
 いよいよ賑やくなってきて、車は完全シャットアウト。客を載せた馬車が何台も回って きます。司会者は、踊り手の衣装や楽器の説明をして、ついで、なんとかいう恰幅のいい、おな かの出た男性を紹介します。(普段着のおっさん、という感じですが知られた人らしい。) 
 彼は、なんのあいさつをするのかと思うと、ほとんど詩の朗読のようなプロヴァンスの賛辞です。もうプロヴァンス語かとまごうほどの強い訛り(というか、プロヴァンス語がまじっていますね)。心をこめて、韻を踏んで、プロヴァンスを讃えます。 
 しめくくりは、「おお、プロヴァンス、おまえは私の恋人」。 現在のフレデリック・ミストラル(プロヴァンスの少女《ミレイユ》の作者)か。 
 これで、午前の部の終わり。すっかり南仏を堪能した私は、ツーロン行きのバスの人となりました。
 
ソロで収穫のダンスを踊る「ミレイユ」
プロヴァンスを称える「現代のミストラル」

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