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52b 【フランを作らなくっちゃ】 中編 
 見ると、隣の両替所の窓口では、地元なまりのおっさんがお姉さんとしきりにやり合っている。どうやら、自分のチェックを換金してもらえないので頭に来ているみたい。さんざん抗議するが「じゃ、道の向こうのXX銀行の窓口に行ってください」といってニベもない対応をしている。
 さて、そのお姉さんに「カードを食べられたので、取り戻したい」とお願いする。彼女は、なんらかの方法ですでに私のトラブルを察知していた。
 すぐにカギでも開けて返してくれるかと思いば、そうではない。 「私にはカードをとりだす権限がない」とくる。「じゃ、誰に権利があるの?」とたずねる。 「それはあなたの銀行です」との返答。
 フランは持ったし、スペアのカードは2枚あるし、カードそのものの所在ははっきりしているからあわてることはない。つまり、ちっともパニックにはなっていない。だが、ここはフランス。さきほどのおっさんにならって大声で抗議してみなければ。
 「私の銀行? それは日本にあるのだよ! 冗談じゃない」と大声を出す。この下りに、両替の列のみんなの視線がどっと私にそそがれるのがわかる。
 「じゃ、この番号に電話してみてください」とメモ用紙をくれる。そこには、ニースのBanquePopulaireの番号が書いてある。自分で電話してくれるわけでもなさそうだ。
 「この機械を特定するために、固有参照番号を教えろ」 「ターミナル1には1台しかないから、そういえば特定出来る」と、ややこしいやりとりをする。
 さて、銀行に電話してこんなややこしいことをフランス語で掛け合う自信がない。それに、わたしは早く空港を出て、ホテルに入って、それから観光したい。
 ホテルにチェックインして、一晩かけて一番費用と自分の時間を使わなくてもよい対応策を考える。 まず、フランスにあるダイナーズクラブに連絡してやらせるのが一番いいだだろう。高い年会費をはらっているのだから、それくらいはやってもらわなければ。第一、私には何の落ち度もない訳だし。
 どうしたらパリのダイナーズの電話番号が分かるだろう。 東京に電話したりして聞き出すのは高くつく。フランスの番号案内に聞くのもおっくうだ。第一、電話番号簿をみてもフランスの104が何番なのか載っていない。
 ひょっとして、とこの町で昨年の9月にBさんからもらった外国人用の小型電話番号簿を引っ張り出して見てみた。
 ちゃんとあるではないか! 各クレジットカード会社の連絡番号が。 ちょっと大きいが、わざわざ日本から持ってきてよかった。
 翌朝の9時すぎ、公衆電話からそのパリの番号に電話してみる。 「あの、英語でいいですか?」ということで、下手な英語の会話を始めると、つられて自分の英語までが下手になってくるみたい・・ (あ、一応、私は英語の方が達者なんです)
 

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