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【4】 サント・マリー・ドゥ・ラ・メール
 昨年、語学学校ではじめてプロヴァンス語のこと、フレデリック・ミストラルのこと、彼の書いた叙情詩・ミレイユのことをききました。フレデリック・ミストラルはノーベル文学賞を受けているのです。 
 昨年は、岩波文庫からでている「ミレイユ」の訳本、「プロヴァンスの少女」を買って、読みました。 少女ミレイユは、荒地の中を海岸の聖地 Stes Maries de la Mer へむかって巡礼に歩くわけですが、途中の厳しい日差しなどで困憊し、息絶えるのでした。 
 その Stes Maries de la Mer をみたい、教会へ行きたい、ミレイユの像がみたい・・・ わたしは、ミストラルが吹きすさぶ中、赤いプジョーをカマルグへと走らせました。 
 Stes Maries de la Merへは、日に何便かバスが通ってはいるけど、やっぱり車があったほうが便利だ。とくにこの先、リュベロンでは車がないと話しにならない。というわけで、予定より早めにHertzのオフィスで車を借りることにした。一番安いのは赤いプジョー106。
   バリパリの新車で快調だったけど、日本のメーカも青くなるくらいコストダウン設計されていた。これから10日ほどこのプジョーにお世話になるのでした。 さて、アルル郊外の道は、畑の中を突っ走ります。しかし、畑は決して肥沃ではなく、白い砂礫でざらざらしています。外は長くいれないくらい寒くても、車内は窓をしめ切っておくと暑くなる。それくらい強い日差しなのです。この日差しでは、ミレイユがやられるのは無理はない。そう、クロウ(Crou)地方の自然は決してやさしい物ではないのです。畑を耕すと、風で砂塵が舞い上がる。だから、所々に防風林がある。その防風林も風でかしいでいる。 
 皆んな飛ばすので、カマルグの町 Stes Maries de la Mer まではすぐだ。 ここは、「何もない町」だ。夏は海水浴で賑わうようだけど、海はただただ寂寥としていた。要塞のような、石づくりの教会も、それだけだった。寒風ふきすさむ中、みやげ屋もミレイユの像もわびしそう。 
 ロマンチックな期待を裏切られながら、私は<夏の観光地> Stes Maries de la Mer を後にした。
 
「ミレイユ」(邦題は「プロヴァンスの少女」)
岩波新書の「プロヴァンスの少女〕〈絶版)
寒そうに立つミレイユの像

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